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SAPシステム(S/4HANA, HANA)の基盤の選択に向けて

SAPシステムの2025年(2027年?)問題はSAPユーザにとって早期に解決への道筋をつけたいの課題の1つです。現ユーザにとって技術的に大きな変更は、S/4HANAがサポートするデータベース管理システムがSAP HANA Platformに一本化されるということでしょう。通常、データベース管理システムの変更は、単に運用手順やSQLの変更だけに止まらず、ユーザデータの変換・移行という大仕事を伴うために可能ならば避けたいところです。加えて、SAP HANAは動作プラットホームがLinuxに限られる上、認定されたハードウェアまたはパブリッククラウドのインスタンスに動作環境を限っているため、オペレーション・システムとその下のサーバ環境(クラウド環境も含む)の移行も同時に実施する必要があります。

こういった状況下、SAPユーザがS/4HANA、HANAの基盤に求めることは、堅牢性であり、サポートの充実、SAP製品との親和性でしょう。このブログでは、SAPシステムの基盤として豊富な実績と高い信頼性を誇るSUSE Linux Enterprise for SAP Applications(以降、SLES for SAPと記述。)について概要説明を致します。

SLES for SAPとは何か?

SLES for SAPは、SAPシステム向けに最適化されたLinuxオペレーティングシステムです。SUSE社のSUSE Linux Enterprise Serverをベースにし、SAPシステムの導入・運用を念頭に置いた各種機能やサービスを付加して1つのサブスクリプションとして提供し、SAPシステムの基盤として多くの実績があるLinuxオペレーティングシステムです。

サブスクリプション方式の販売

SUSE製品はオープンソースを基に開発された製品で、ビジネス形態としては永久ライセンスではなくサブスクリプションの販売という形式をとっており、販売代理店から購入することができます。(SUSE製品一般のサブスクリプション説明はこちら)
従いまして、SLES for SAPもサブスクリプション方式で提供されることになります。

尚、無料の評価版を入手することができ、SLES for SAPはこちらから入手することが可能です。

SLES for SAPサブスクリプション

以下がSLES for SAPのサブスクリプションの内容です。

  • SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applicationsソフトウェア本体(以下を含む)
    • SAPアプリケーション向けに開発された各種機能
  • SUSE Linux High Availability Extension
  • 24時間×365日のプライオリティサポートとESPOS(3年間の延長サポート)
  • SAP社とのジョイントサポート

ユーザはSLES for SAPのサブスクリプションを購入するだけで、SAPシステムを安全かつ効率的に運用する環境を全て入手することができ、他社製ソフトウェアの追加購入をしたり、汎用LinuxをスクラッチからSAP運用環境にまで設定・仕上げる手間をかける必要はありません。

SAPシステム市場におけるSUSEのマーケットシェア

SUSE LinuxはグローバルのSAPシステム向け市場という切り口で見ると非常に高いシェアを維持しています。
SAP HANAシステムでは90%、Linuxに限ったNetweaverでは80%、SAP Business Oneに至っては全てのシステムがSUSE Linux上で動作しています。(SUSE本社独自調査)

これにはいくつか理由がありますが、同じドイツ国内のソフトウェアベンダー同士で、地理的にも近いという理由によるところが大きいかも知れません。実際、開発、テスト、サポートに渡って様々な視点で長期的な協業が行われており、SAP HANAの開発プラットホーム、SAP社内のS/4HANAの本番サーバにSUSE Linuxが採用されています。また、SAP Cloud PlatformにもSUSE製品が採用されています。さらに、SAP製品のLinux製品の開発や検証テストなどを行うSAP Linux Labにも多くのエンジニアを投入しています。このようなSAP社との密な協業体制が製品の信頼性を高めている理由の1つでしょう。

以降では、前述したSLES for SAPサブスクリプションの内容について説明します。

SUSE Linux Enterprise Server

SUSE Linux Enterprise Serverは、エンタープライズ向けLinuxオペレーティングシステムで、基幹業務を運用するのに相応しい安定性と機能を持っています。以下に機能のいくつかを説明します。

フルシステムロールバック

この機能を使用すると、ワンクリックで、サービスパック適用やカーネルアップグレード前など戻りたい時点にロールバックすることができますので、安心して作業することができます。また、ライブパッチング機能を利用してリブートを心配せずセキュリティパッチを Linux カーネルに適応することが可能になります。

フルシステムロールバック機能

ライブパッチング

セキュリティ上脆弱性の深刻度が高いものやシステムの安定的な運用を脅かすようなバグなどに関するカーネルパッチの適用は避けて通ることはできません。しかし、サービス継続の観点からは、パッチ適用に伴うシステムの再起動でサービスが停止する状況を避けたいのも事実です。ライブパッチング機能を使用するとカーネルライブパッチとして提供されたセキュリティパッチやバグフィックスを、システムの再起動をすることなく適用することができます。
カーネルライブパッチはSUSE Linux Enterprise Live Patching と呼ばれる拡張(Extension)として提供されています。

パーシステントメモリー対応

Intel Optane DC(tm) NVDIMMとIBM PowerVM(tm)による仮想PMEMをサポートすることにより、SAP HANAのデータボリュームをメモリ上に配置可能になりました。再起動後にストレージからデータを読み込む必要がないため、障害復旧までの時間を大幅に短縮できます。

SUSE Linux Enterprise Serverのその他の情報についてはこちらの製品紹介サイトをご覧ください。

SAPアプリケーション向けに開発された各種機能

SLES for SAPにはSAPシステムの導入や運用をシンプルにするために様々な機能を備えています。一般にオペレーションシステムが特定のアプリケーションに合わせて開発や設定が行われることは少ないですが、SLES for SAPは後述のSUSE Linux High Availability Extensionと併せて、積極的に専用の開発を行うことにより、SAPシステムの導入や運用をシンプルかつ効率的にすることに貢献しています。

SAPインストール

SLES for SAPのインストーラが、SAP製品に合わせてストレージ設定やカーネルパラメータ設定を行ってくれます。これにより、使用するSAP製品に最適なパーティション構成yやSAP HANAシステムでスワップアウトの発生を極力回避するカーネル設定がおこなわれます。
また、SLES for SAPのOSインストールプロセスと連続的にSAP HANAやNetweaverのインストールを行うことも可能です。

上図はSAPインストールが提供する画面2つを示しています。左はSLES for SAPのインストーラのある画面ですが、OSインストールの後にSAPの製品を継続して行うかどうかを指定する画面です。右側はSAP HANAのインストール情報を収集する画面です。

SAPインストールを使用すると、単にOSとHANAを連続してインストールできるだけではなく、

  • SAP製品に合わせたOS設定を同時に行ってくれる
  • CD/DVDドライブが無くてもネットワーク経由でアクセス可能なインストールメディアイメージからインストールできる
  • インストール済みのSLES for SAPと同じ設定ながらホスト名やIPアドレスなど固有情報を反映したインストールをする

などプロジェクトにおけるテスト・開発環境の構築や、運用におけるSUSE Linuxディプロイメントなどを簡単に手間暇をかけずに行うことができます。

saptune〜OSパラメータの自動設定

SLES for SAPにはsaptuneというコマンドがあり、その環境に適用すべきSAP Noteのリストに記述されている各種設定の自動実行を行ってくれます。saptuneにより管理者は、SAP Noteのチェックや記述内容を実施すべきかどうかの判断に時間を費やす必要がなくなります。

上図は、あるバージョンのSAPtuneが適用可能なSAP Noteの一覧をソリューション別(SAPアプリケーション別)に表示しているところで、この環境ではHANAがインストールされており(左端 *印)、7つのSAP Note(“HANA”より右側の番号リスト)のが適用されることを示しています。

HANA Firewall

SAP HANAインスタンスはサービスコネクションが多く、ポート番号も多数、使用します。HANA Firewallは、HANAが動作するSLES for SAPのローカルFirewallに対して、ポートの設定を一括で行うことができる便利なツールです。
また、SAP推奨のネットワークの3セグメント化(Service, System, Storage)の設定もこのツールで行うことができます。

ClamSAP

SLES for SAPにはウィルススキャンソフトが同梱されており、SAP製品とウィルススキャン製品間のインターフェースであるSAP VSIに対応しています。他社製ウィルス対策ソフトの検討を行う必要がありません。

SAP HANAの場合、SAPの規定に則った基盤環境が設定済みの状態で納入されたり、パブリッククラウドのHANA用環境設定手順が確立されているために、以上機能は納入ベンダーやクラウドオートメーションの開発者のためのものと思われがちです。しかし、プロジェクトでテスト環境を構築する場合や、実運用の中で経年変化に合わせた環境設定を行う際に必要な作業がシンプルになりかつ短時間で可能になるため、プロジェクトにおける開発メンバーや運用担当者にも有用であると言えます。

SUSE Linux High Availability Extension

障害や災害に備えてサーバを複数用意し、非常時には待機システムに切り替えてサービスを提供するHA構成は基幹システムの必須要件です。SUSE LINUX High Availability Extension(以下、HA Extension)は、本来はSUSE Linux Enterprise ServerをHA化する際に必要なオプション製品ですが、SLES for SAPには最初からこの機能が含まれています。

SAP HANA システムの場合、高可用性構成をとる場合にはシステムレプリケーションを使用するケースが多くなります。システムレプリケーションにより複製データベースを生成・運用し障害や災害が発生した時に複製データベースサーバ、つまり待機系サーバがサービスを受け継ぐというポリシーです。但し、システムレプリケーションが提供する機能はデータベース複製と稼働系/待機系間のデータベースの切り替えのみです。

一方、HA Extensionでは、SAPシステムにおけるリソースが事前に定義されており開発済みのリソースエージェントが含まれています。例えば、SAP HANAの基盤として使用する場合は、複数のプロセスが健全に動作しているかどうか、システムレプリケーションが問題なく機能しているか、をリソースとして監視し有事の際にはテイクオーバなどのアクションをトリガーします。

SUSE LINUX High Availability Extensionの構造

この両者-システムレプリケーションとHA Extension-を組み合わせることにより、SAP HANAの高可用性システムの自動運用が可能になります。また、Netweaverの場合もランドスケープの監視やトランザクション管理のためのQueue監視などが準備されており、同様に高可用性システムの自動運用が可能になります。

SUSE LINUX High Availability Extensionの製品紹介サイトはこちら

24時間×365日のプライオリティサポートとESPOS(3年間の延長サポート)

SLES for SAPのサブスクリプションには、24時間×365日サポートとESPOS(3年間の延長サポート)が最初から含まれています。

ESPOS(Extended Service Pack Overlap Support)

SUSE製品はメジャーバージョンの最初のリリースをGA、以降のマイナーリリースをService Pack(SP)と呼びます。製品サポートは、通常、GAまたはSPリリースから18ヶ月が既定であり、長期サービスパックサポート(LTSS:Long Term Servicepack Support)を購入することでサポート期間を延長することができます。また、1つのメジャーバージョンのサポート期間は10年ですが、最大3年間の延長サポートを購入することも可能です。

SLES for SAPの場合、通常の18ヶ月のサポートに加えて36ヶ月の延長サポートがサブスクリプションに含まれています。この延長サポートをESPOSと呼びます。ESPOSによりユーザは、GA/SPごとに18ヶ月+36ヶ月=4年半のサポート期間が得られ、1つのGA/SPにより長く留まりながらバージョンアップ計画を組むことができます。

SLES for SAPのサポートライフサイクル

SAP社とのジョイントサポート

SLES for SAPサブスクリプションでは、24時間×365日のプライオリティサポートが提供されます。サポートの体制も2社のジョイントサポート体制が整備されています。一般的に、製品が異なる場合サポートするベンダーも異なるため、問題の切り分けはユーザ側で行いますが、必ずしもそれが可能な場合だけではありません。SLES for SAPのジョイントサポート体制では、SAP環境の問題は、通常のSAPエスカレーションチャネルを介してサポートリクエストを開始しますが、SAPは必要に応じてSUSEを関与させ強調して解決を図るケースもあります。

 

以上、SLES for  SAPのご紹介でした。SLES for SAPは、単に動作環境として動作条件を満たすだけというレベルでSAP S/4HANAやSAP HANAをサポートするだけでは無く、導入や運用の見地から必要とされるであろう機能・性能について、SAP開発部門と密に協力して、必要な開発やテストを行っています。SAPシステムの基盤に最適な製品と言えるでしょう。

以上。


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  • この記事に関するお問い合わせは、担当までお寄せください。
  • 当該ブログの記述内容は、製品マニュアル、各種サービスに関する説明、プレスリリースなど弊社が配布する文書、Webサイト上の情報を基にできる限り正確な記述に努めておりますが、もし内容が異なる表現や複数の解釈が可能な表現があった場合には、製品マニュアル、各種サービスに関する説明、プレスリリースなどの情報を正しい情報としてご理解の上、担当まで御一報ください。
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Category: Enterprise Linux, S/4HANA, SAP Solutions, Server, SUSE Linux Enterprise High Availability Extension, SUSE Linux Enterprise Server, SUSE Linux Enterprise Server for SAP Applications
This entry was posted 月曜日, 16 3月, 2020 at 7:52 am
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