2007年に設立され、現在は東京証券取引所グロース 市場に上場しているMicroAdは、ビッグデータや機械学習、AIを活用し、予測型デジタルマーケティングに注力しているデータ企業です。
MicroAdは、210を超えるパートナー企業から提供を受ける膨大な消費行動データを集約した、データプラットフォーム「UNIVERSE」を軸に、広告配信の 「UNIVERSE Ads」と、パブリッシャー向け収益化 サービス「MicroAd COMPASS」を展開しています。
代表取締役社長執行役員の渡辺 健太郎氏のもと、 自動車や飲料食品、化粧品、自治体などの様々な業界業種に対し、データを活用したマーケティングプロダクトを提供しております。渡辺氏はデータを 「21世紀の石油」として重視しており、データとAIとの掛け合わせにより新しい産業やサービスが生まれて いくと考えています。
今後もMicroAdは、未来を予測する企業として進化を続け、従来のアドテクノロジー企業から「総合データカンパニー」を目指し、データ活用を軸とした成長戦略を描いています。
概要
デジタルマーケティングにおける予測分析のリーダーであるMicroAdは、 データを活用した消費者行動の予測、 先導に注力しています。この目標を達成するために、MicroAdは迅速な導入と高いセキュリティを両立しつつ、 データインフラをシンプルで拡張しやすいものにしたいと考えていました。Rancher Primeの導入により、MicroAdは膨大なデータレイクやその他のアプリケーションを支えるKubernetesクラスタを効率的に管理し、運用コストの最適化を実現。これにより、チームが最先端のインサイトに集中できる環境が整いました。
コンテナ化への取り組み
デジタル広告の世界は、プライバシー規制の強化とクッキーレスの時代に向けた準備が進む中で、急速に変化しています。2024年7月、Googleがサードパーティクッキーに関する方針を見直したことで、 プライバシーに関する議論が再燃し、企業は透明性を優先しながら、効果的にターゲットを絞る 革新的な方法を模索する必要に迫られています。MicroAdのシニアエンジニアである永富安和氏は次のように述べています。「業界全体が、ユーザープライバシーを尊重するためにクッキーの使用を制限することに注力しています。MicroAdでは、広告配信のプラットフォーム(DSP)と媒体社の広告 収益化プラットフォーム(SSP)のためにクッキーレスな代替技術の開発に多大な投資を行い、こうした変化に先んじています」
プライバシーの課題に加え、MicroAdはディスプレイ広告における広告詐欺やブランドセーフティの問題にも取り組んでいます。永富氏は次のように説明します。「ディスプレイ広告には、広告がどのようなコンテンツと一緒に表示されるかを管理するのが難しいという独自のリスクがあります。それぞれの企業には独自のブランドセーフティ基準があり、 一貫性を保つのは容易ではありません」。こうした課題に対応するため、日本ではデジタル広告の品質を促進し、詐欺的または安全でない広告配置からブランドを守る第三者認証機関であるJICDAQ が設立されました。MicroAdは、ポストクッキー戦略を支えるインフラ構築の取り組みとともに、 JICDAQ認証を取得し、品質へのコミットメントを強化しています。
さらに、デジタル広告業界にとって重要な課題となっているのが、ファーストパーティおよびサード パーティデータのほぼリアルタイム、またはリアルタイムでの処理に対する需要の増加です。この増大する膨大なコンピュートリソースへの要求に対応するため、MicroAdは拡張可能なデータ処理インフラと、大量データを迅速かつ効率的に分析できるインフラ基盤の構築とその発展に継続的な投資を行っています。これにより、非常にパーソナライズされた関連性の高い広告体験を実現しています。 これを達成するには、将来のさらなる成長を支える洗練された技術基盤が必要不可欠です。
「当社のインフラは高密度かつスケーラブルなコンピューティング環境に依存しており、Kubernetesは当然の選択でした。そして、Rancher Primeは必要としていた運用の容易さを提供してくれました」
Rancher Primeを選んだ理由
「データレイクの複雑さを管理し、従来のHadoop クラスターからKubernetesベースの構成への移行 には、強力なソリューションが必要でした」と永富氏は語ります。MicroAdは、膨大なデータ量を処理できるだけでなく、デジタル広告業界の進化する要件に柔軟に適応できるプラットフォームを求めていました。 この業界では、アジリティ、スケーラビリティ、データ の完全性が極めて重要です。
MicroAdは、Red Hat OpenShiftやDatabricks、Google CloudのBigQueryといったSaaSプラットフォームを含むいくつかの選択肢を検討しましたが、 最終的にRancher Primeがコスト、管理性、機能性、 移行コストのバランスにおいて最適であると判断しました。
Rancher Primeは、クラスタ管理を効率化し、ワーク ロードの展開をよりスムーズにします。「当社のインフラは、高密度でスケーラブルなコンピューティング環境に依存しています。Kubernetesが論理的な選択であり、Rancher Primeが必要な運用の容易さを提供してくれました」と永富氏は述べています。 このソリューションのマルチクラスタ管理機能は、 MicroAdがデータオペレーションを拡大する中で Kubernetes管理を簡素化する重要な要素となっています。Rancher Primeを導入したことで、インフラの統合が進み、運用コストを20%削減し、イノベーションにリソースを集中させることができました。
また、アクセスの容易さとセキュリティも重要な決め手となりました。Rancher PrimeのWeb UIにより、クラスタ監理者を含む利用者は深い技術的知識がなくてもKubernetesクラスタリソースにアクセスできるようになり、Kubernetes導入に対するオンボーディングコストを低減させました。さらに、GitHubとの統合により、アクセス管理が簡素化され、権限をより安全に管理することが可能になり、MicroAdのブランドセーフティとプライバシー目標を強化しました。
Rancher Primeの導入効果
「Rancher Primeを活用することで、パフォーマンスを損なうことなくデータ処理能力を最適化することができました」と永富氏は語ります。「さらに、管理作業負担の50%削減も実現しました」。
MicroAdは、Hadoopクラスターから、Kubernetesクラスタ上で動作するApache Iceberg、Apache Spark、Trinoを使用したモダンなデータレイクハウスアーキテクチャへ移行しました。この構成により、 MicroAdのエンジニアは、より俊敏かつ信頼性の高い形で複雑なデータワークロードに対応できるようになり、高品質な予測分析を提供する能力が強化されました。この移行を通じて、SUSEのサポートはMicroAdチームにとって貴重な資産となりました。直感的なツールの提供や専門的な指導により、 チーム内のすべてのメンバーがKubernetes管理に貢献しやすくなり、インフラチーム内で継続的な学習の文化が育まれています。「Rancher Primeとその 周囲のサポートネットワークのおかげで、特に経験の浅いエンジニアでもKubernetesクラスタを自信を持って管理できるようになりました」と永富氏は 説明します。
MicroAdの次のステップは?
今後、MicroAdはデータプラットフォームのさらなる進化を目指し、より強力な予測分析を提供する計画です。その主な取り組みの一つとして、データレイクハウスの機能を拡張し、リアルタイムやほぼリアルタイムのデータ処理を可能にすることで、より迅速な洞察の提供とクライアントの意思決定の強化を目指しています。また、MicroAdは、業務システムのデータベースで発生するデータの操作をリアルタイムまたはニアリアルタイムでデータレイクハウスに反映する「Change Data Capture(CDC)」の導入を検討しています。これにより、従来個別に対応していたバッチ処理の開発コストを大幅に削減し、システム負荷やデータ転送コストを抑えた効率的なリソース運用が可能な環境の構築を目指しています。
「まだ旧データ基盤からの移行は始まったばかりです。ただ、Rancher Primeのおかげで、予測分析の限界に挑むために必要な柔軟性とセキュリティを手に入れることができました」と永富氏は述べます。「私たちが成長を続ける中で、Kubernetesインフラはデータ基盤にとどまらず、革新を推進し、将来の需要に応えるためのスケーリングにおいて中心的な役割を果たしていくでしょう」。
SUSEのソリューションがこの取り組みを支える中、MicroAdが真に包括的なデータ企業になるというビジョンは、現実のものとなりつつあります。